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☆アイテールの絵本屋さん☆

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アルカディアの聖域~第三章前編その2~

~アルカディアの聖域内部~



闇の中で、声が響いた。


「あのネ! 私考えてた事があるノ!」


心底楽しそうに、ドでかい声が響いた。
周りにいるのは、玉座らしきところに座っているのが一人
その両端に二人 そのうちの一人が騒いでいた。

「何なの?念のため聞いておいて上げるけど」

鬱陶しそうに前髪を払いながら気だるい声をだす、もう一人の女。
依然玉座の女は言葉を発しはしないが、二人の会話を微笑ましそうに見つめている。

「たとえばだヨ!? ここに姫様特権であるクッキーがあるよネ!?」

唐突にどこぞの空間から十枚ほどのクッキーを取り出し、叫んだ。
小麦色に焼けたそれは、外見から見ても最高の菓子だと言える

「お前それパクってきたのか・・・」

白髪をかき分け、はしゃいでる女を見つめる。
ショートでザクザクの前髪に、ピンクの髪留め。
可愛いのだが、顔立ちからは凛とした表情も見え隠れしていた。

「もぅちゃんと聞いてヨォ! これがもし緑色だったらどうするノ!?」

ボディランゲージばりに激しく身体を動かす。
天真爛漫。 ムードメーカー道をFー1ばりにトップでつっぱしってそうな子だった
ボディランゲージというより、狂喜乱舞に近い動きにも見えた。

「そりゃ何が入ってるのか確かめてから食うでしょ」

そんなこと当たり前でしょ?とでも言うように女の子を鼻で笑いながら見る
女の子は一瞬ためらい、どうも腑に落ちない、という顔つきで

「あぁ、そっカァ でもネ? 私はやっぱり焼いてからの方がいいと思うノ」

かみ合ってるのかかみ合ってないのか中途半端な言葉を発した。


「クッキーって売ってる時点で焼いてあるんだよ・・・・・・?」

「エェ!? もう加熱済みなノ!? じゃあこれピンク色にもなるんじゃナイ!?」


知識の乏しい子を慈しむような目で見る白髪と、好奇心旺盛で鼻息が荒いもう一人の女の子。

彼女たちの名は、白髪がセシア 元気なのがカーディルである。
聖域で生まれ、育ち、幾多の戦場を駆け抜けてきた同士であり、姉妹のような存在だ。
先の争乱である、聖域とレッドアイの抗争の時も活躍した二人である。
ちなみに、カーディルはCカップ セシアがDカップらしい。

「姫さまー こいつ黙らせてー」

いい加減うんざりしてきたのか、セシアは玉座にいる、フレイ・エリア・リス
ティス
通称、姫に助けを求める。
だが、姫はにこにこしながら事の成り行きを見守っていた。

「なんなのヨゥ! 私だって真剣なんだヨォ!?」

カーディルはセシアに詰め寄り顔面約3センチというところまで迫る

「うるさいなぁー・・・・・・」

セシアはうざったそうに顔を横に向けボソリと呟いた
カーディルが、キレた。

「むっきー! もう怒ったのだワ! アナタ殿もこのクッキーみたいにチョコ
チップでおいしく頂きますしてやるヨ!」

突如身体から紫色のオーラを放ち、片手に持ったクッキーを手裏剣のように構える
万物武器化 カーディルの能力である。
なんでもかんでも武器にする、という意味ではあるがその破壊力は常識を越えた物なのだ。
セシアも冗談だと解っているからこそ、普通に接している。
しかし、ひとたび彼女が本気になれば、クッキーだろうと山をも壊す兵器に成り得るのだ。

「はいはい、いつでもどうぞー・・・・・・」

一方セシアは最近増えた枝毛のお手入れをしながら適当に返事をしている。
カーディルはセシアのその行動にまたもやキレた。
姫は、にこにこと我が子の喧嘩を見るように楽しそうに、それはもう楽しそうに
見守っているのであった。

「むっきゃーーーーー! クッキー手裏剣我流奥義! 見せてあげてさしあげてもよくってヨォーーーー!?」

皆さん、想像していただきたい。
ポケモンの技である ヨガのポーズを。
まさしく彼女は、何とも表現しがたいポーズで固まってキレているのだった。

「ヘタレな流派もあったもんだな・・・・・・」

鼻でフッと笑うセシア。
それを見てさらに逆上するカーディル。
なんともカオスな空間である。


「時にカーディル? なんで私のおやつを持ってるのかしら?」


姫はとても静かな声で言った。 
だが、透き通るような声は部屋の内部に反響し大きく聞こえた。

「ア! これはネ! 姫さまのお部屋の前にあったワゴンの中に入ってたノ!
そのなかにはいっぱいい~~っぱいおいしいものあったのヨゥ!」

「姫 こいつ黙らせましょうか?」

目をきらきら輝かせ悦っているカーディルと
背中の槍に手をかけるセシア。

「こら、無駄に人を傷つけてはいけませんよ
カーディル こちらにいらっしゃい?」

姫は、ちょいちょいっと手招きする。

「はいだヨゥ!」

元気よくカーディルは返事をして、階段をステップ良くとんとん♪と上っていく。
そして姫の前に立つと、満面の笑みでクッキーを見せびらかした。


「他のも食べたのかしら?」


至極笑顔で。
それだけ、たったそれだけの事なのに空間が凍り付いた。
セシアは直感する。

(珍しく姫様が怒ってらっしゃる・・・・・・)

「う・・・・・・ はぃ・・・・・・」

歯切れの悪い返事をするカーディル。
姫を上目使いで見て、目から特殊なキラキラを放射する。
しかし、それも姫には効かないようで。


「食べたのね?」


笑顔で立ち上がる姫。

「いやでも姫様の分はちゃんとのこしt」

顔を引きつらせながら後ずさるカーディル。


「食 べ た の ね ?」


カーディルの前に立ち、満面の笑みで。
しかし、目は笑っていなかった。
姫は大の甘党で、お菓子は何でも大好きという性格。
このクッキーも、護衛役兼コック長のスバルという男が作った最高級品なのだ。
それを楽しみにしていたのに、しかも大好きなチョコチップクッキーを。
内心、めらめらと沸き立つ憤怒の想いが身体を支配しているのだろう。

「はい・・・・・・」

ごめんなさぃ・・・・・・と泣きそうな声で言うカーディル。
それがひどく可愛らしかった。
それを見て姫も普段の冷静さを取り戻し

「おしおき」

そう言って、カーディルの額にデコピンを放った。

「あう」

突如食らった不意打ちに情けない声を上げるカーディル。
自分は百戦錬磨の戦士なのに、この程度の攻撃も防げないなんて、と赤面した。
姫は何を思ったのか、カーディルに抱きついた。

「あれ・・・ 姫様ァ?」

ふんわりとした感触が、全身に勇気をくれる。
さらりとした髪が、全身に優しさをくれる。
自分より身長が低い姫は、カーディルにとって妹のように思えた。
姫は笑顔で、カーディルにこう言った。

「今度から、しないように」

セシアもそれを見届け、安心する。

「あ・・・・・・」

目をくりっくりと輝かせ

「ウン!」

カーディルは元気よく返事をした。

「ったく、姫様は優しすぎる」

その場で姫を抱きしめ縦横無尽に可愛がっているカーディルを見てセシアが言った。

「無邪気で可愛いじゃありませんか 貴方もこの子の事は十分解っているでしょう?」

撫でられ舐められ愛でられつつも笑顔で話す。
まるで、本当にカーディルを愛しいと思うように。

「クサレ縁ですからねー ほらカーディ 戻っておいで」

「ほみ!」


「さて・・・・・・そろそろ、四人はリンケンについた頃かしら・・・・・・」


闇が、動いた。
部屋を包んでいた優しい光は無くなり、ただ暗闇が支配していた。

「ですね 天球を見てきましょうか?」

「いいえ、あの子達ならきっとやれるわ」


「私の 妹ですもの ふふっ」


一瞬間を置いて、姫は含みを込めた笑みを顔に残した。
それは決して、仲間には見えなかった。

「姫様、なにかいったァ?」

もしかすると自分でさえ見れなかったかも知れない。

「何も? ほらカーディル、セシア あなた達も万一に備えて準備をしなさい」

だが、今はそれで十分だった・・・・・・

「了解ダァ!」「了解しました」


(アイテール、聖域で待ってるわ)


闇が また動いた。




~砂漠都市リンケン~

オアシス都市アリアンからは想像もつかないほど殺伐としたこの街。
そもそも、この街の警備隊はとうに解散しており、今は少数の特別派遣されたファミリアで納められている。
これは聖域の仕事であり、あまり干渉しすぎずに地世界の治安を守るため、だと教えられた。
石造りの家が並ぶところはあまりアリアンとは変わりないが、まわりをチョコチョコはしるファミリアが可愛かった。
アイ達はハースを宿屋に置いて行き、早速聖域の力を持つ者を探すべく行動を開始。

アイはフロと
トグはイクィと

という具合なのであるが・・・

「ダルイ」

既に目的を見失い酒場で死にそうな顔をしながらジュースをすするアイの姿があった。

「もー アイさん こんなことじゃ見つかりませんよー!」

「いーのいーの どうせ力があったらあっちからくるってー
 ほらRPGでよくあるじゃん同じ仲間が力を求めて「犯人はおまえどぅあー!」つって」

「アイさん、なんか別のゲーム混ざってるんですけど・・・」

「あーうっせうっせ こっちはあついんだよー」

そうなのだ。
アリアンでは乾いた暑さだが、此処は地盤の関係でしめった暑さが身を襲う。
梅雨、とも呼べる湿度の空間で、しかも暑い。

「確かに・・・ あ、ありがとうございます」

やがて、フロが注文したブラウンベアの香草焼きとスープにパン、というメニューがテーブルの上に並んだ。

「フロちゃん良くたーべるーわねー・・・」

「このくらい食べないと、暑さなんてしのげません ほらほら、アイさんも食べて食べて
お金ならイクィさんが置いていってくれましたし、このお店のメニュー全部食べてもおつりが来ますよ?」

・・・・・・・・・・・・グぅ~~~っ

「ぐぁ・・・・・・」

「ほら見たことか! さぁ、僕の食べて良いですから」

アイはぐぐっと顔を持ち上げ、よだれを垂らしながらフロの目の前にある料理を見つめる。
そして何を思ったのか、スープの中にパンをいれぐちゃぐちゃにかき混ぜた。

「うわっ汚いですよ!」

「お腹すいてて気力もないときはこうして食べるのが一番なのー」

それを流し込むように食べ、今度はメニューを見て

「そこの可愛いおねーさーん この店で一番上等のお肉6枚やいてー あ、香草でねー」

突然話しかけられた女の子は、ビックリして店主らしき男に耳打ちをする。
何度かささやきあった後、店主らしき男が近寄りこう言った。

「お客さん随分食べるようだが? まずはお金をみせてもらえねぇか
このご時世だ 食い逃げなんざ日常茶飯事でな? だから気悪くしたらすまんが、
先にブツを拝ませてもらってから焼くからよ・・・・・・」

男は申し訳なさそうに頭を下げた。
それを見てアイは、自分の財布から金貨5枚をカチャリとテーブルに置く。
それは、旧ブルンネンシュティグ時代の硬貨だった。
そしてその価値は、10枚あれば土地が買える値段である。
確かにこれだけあればこの店のメニュー全て食べられるだろう。

「これで、たり・・・・・・る?」
勢いよく置いたは良い物の、男があまりにも厳しい顔で硬貨を睨みつけるので
アイも心配になったのだろう しかし、男はハッと気付いたように笑顔になり

「この店の特上の肉を振る舞ってやるよ!」
と、豪快に笑い店の奥に消えていった。


「ところでアイさん、聖域の事ですけど・・・」

フロは、突然遠慮がちににアイに話しかけた。

「このままハースさんをおぶって、何処にあるのかも解らない所へ行くんですよ?
アイさんは、不安・・・とか そういうの無いんですか?」

「別にー? なるようになるんじゃないのー?」

そんなの興味ない、と言う風にひらひらと手を振る。

「そうですか・・・ そうですよね 
今までもそうして来たんだし、このくらいじゃへこたれないのがアイさんですからね」

やがて会話が途絶え、肉の焼ける匂いが辺りに広がる。
少しの静寂があり、アイは溜め息を吐いた。

「最近さー・・・思うんだ」

アイが、テーブルに頬杖をついて、壁に掛けられた風景画を見る。

「アタシがなーんで聖域に選ばれたのか なんで、父親がドラゴンなのかー・・・ってね」

「アイ・・・さん・・・」

「ほら、普通は両親の顔みて育っていくでしょ?
なのにアタシは、本当の親の顔もしらないしー なんか変なことに今巻き込まれてるし」

フロがうんうんと頷く。

「ぶっちゃけ不安っていうか、まだ自分の中で気持ちの整理がついてないんだと思うよ
私だって怖いって思ったら怖いし その時が来れば諦めて普通の生活に戻るかもしれない」

風景画を見つめたまま、また深いため息を吐く。

「アタシ、なんでこんな所にいるんだろね・・・・・・」

その時だった。

「おいおいおいおいじいさんよぉ!」

店内の一角。 テーブル席から野太い男の声が響いた。

「今日中に食料ありったけ持ってくるって約束だったよなぁ!?」

男が三人、座っている老人を囲んで罵倒している。

「うちは貧乏なんだ! これくらいしか食料は分けられん!」

「んなこと知るかボケが!」

ドン! とテーブルを叩く音と、老人のおびえる声。
アイはフロの方を見て(ほらイベント始まったw)と言わんばかりににんまり笑った。

「俺たちを誰だと思ってるんだ? 最強の組織REDEYEだぞゴルァ!」

瞬間、その場の空気が凍り付いた。
フロは立ち上がり、男の方へ歩いていく。

「へっ! 驚いてぐぅの音もでねえか! うひゃひゃひゃ・・・? なんだぁ坊主?」

高笑いをしていた男は、自分の側にいつのまにかいたフロを見る。


カチリ


「死にたくなけりゃ今後その老人から手を引きな さもないと痛い目みるぜ」


魔導銃を男に突きつけるフロ。
その銃口は男の顎を捕らえていた。

「お、玩具だよな・・・? お前なんかが本物を持ってるはずねぇよなぁ!?」

「おもちゃだと思うならそう思いな 痛みは現実だからよ」

声にすごみがある。
本気で殺るつもりだ。

「く、くそ!」

そう言うと男は、腰にぶら下げた片手剣をすらりと抜き、おぼつかない手つきで構える。
その内の仲間二人は、フロの剣幕に押され床に尻餅をついていた。

「お前っ! こここれ以上逆らうとたたっきるぞ!!」

ぷるぷると持っている片手剣が振るえる。
扱い馴れない剣の重みと、目の前の眼光をまともに制御できてないのだろう。

「組織はいつからそんなに臆病になった? 平気で人を殺す集団だろうが」

「く、糞・・・!」

そう言うと男は剣を思いっきり振りかぶりフロの肩口めがけて振り下ろした。

フロは、男が剣を降ろした瞬間に何かに跳ね飛ばされ、床に転がっていた。

「あ、ああああ・・・・・・!!」

男は怯えているようだ。 フロは起き上がり、男の方を見る。

「・・・・・・! アイさん!」

「いくら大人でもやって良いことと悪いことがあるでしょ これに懲りたら二度と私の食事の邪魔しないでね」

アイの右肩に剣がめり込んでいた。
血があふれ出て、腕先はピクピク痙攣している。
左手は男の剣を持った腕を掴み、みしみしと締め上げていた。

そして、すぅ と息を吸い込み、獣のような咆吼をあげた。



「二度とこの店の人に手を出すな!!」



その目には赤銅色の光が微かに輝いていた。
無意識のうちに聖域の息吹を使ったのだろう。
アイは男の手を乱暴に震い、身体ごと店の外まで飛ばした。

「ひ、ひいぃぃぃいぃいぃいい!!」

男達は、地面に躓きながらも必死に逃げていった。
それを見届けたアイは、肩の痛みが蘇ったのか片膝を着き苦しそうに呻いた。

「アイさん! なんでこんなことしたんですか!!
 あいつらくらい、僕ひとりで・・・・・・」

「はん アンタにやらせるならアタシがやった方が早いでしょうが」

アイは肩を押さえながら、よろよろと立ち上がる。

「それにね ガキに殺しをさせるような奴になりたくないの
 まだ力の制御なんて出来てないでしょう? ほれ さっさと肩かして」

フロは言われるままにアイに肩を貸す。
椅子になんとか座ったアイに、水を渡した。

「この先に、医者がいる 店を守ってくれた礼だ そこのじいさんはこの店の元主人なんだ」

マスターが傷口に布を当て、その上から水をかける。
濡れた部分からじわじわと血の色に染まり、それを十分に吸い取った後
もう一枚の 今度はさっきより生地の厚い布を傷口に巻いた。

「いつつ・・・」

「我慢してくれ これも傷口を押さえる方法の一つだ」

布の上から革製のショルダーガードを丸め、肩に当てその上からまた布を巻く。
痛みは残っているが、血が表面ににじみ出ることはなくなった。

「お嬢さん、有り難う ああ見えて根は良いやつなんだが悪知恵が働いてのぉ
 わしからもお礼をさせてくれんか?」

老人はそう言うと、壁に掛かっているグローブを手に取った。

「これはマスグリップ、と言ってな 打撃戦に重宝するグローブじゃ
 じゃが、残念なことに右腕しか無くてな、これでよかったらもらってやってくれ」

それは、棘がいっぱい付いた鉄製のグローブだった。
冗談なのか本気なのかは解らなかったが、アイはとりあえずそれを旅荷物の中に入れた。


~リンケン中央広場~

「水の神にー土ーと闇ーのばーんーくるー」

「35点です」

「こりゃまた手厳しいね・・・・・・」

トグ、イクィは出店の並ぶ中央広場を探索していた。
小さいにしろ街は街、片っ端から聞いて回る訳にもいかず、ここで情報収集という形で収まった。

「しっかし・・・・・・」

トグはしかめっつらで足下を見下ろす。

「こいつらどうにかならんのかね・・・・・・」

トグの足下には、ファミリアが2匹座っていた。
靴の上に腰を下ろし、キュイキュイとなにやら会話をしている。

「ふふっ 可愛いじゃないですか? 私は好きですけど」

ここリンケンは、先にも記したがファミリアが自治を勤めている。
実際には、ファミリア達を統括するビーストテイマーが街の警護、治安を守っているという。
ファミリア達は人に害を及ぼさず、人の言葉はしゃべれないが理解は出来る、という変わった生き物だ。

「おいお前ら この街の責任者に会わせてくれないかー?」

「キュイー?」

「んあ 難しかったか? リーダーいないか? リーダー」

「キュー!」

「うわめっちゃ怒ってらっしゃる!」

といった状況で、動くに動けないのが現状である。
ファミリアは、上下関係が大嫌いである。
自然の中で育つ者は皆仲間と信じてる彼らにとって、トグの言葉は禁句だったようだ。

「さて、どうしましょうか・・・ このままって訳にもいきませんし・・・」

石段に腰を下ろし、膝に乗っているファミリアの頭を撫でながら、イクィはため息をつく。
ファミリアは、イクィのほっぺをくにくにと押して遊んでいる。
それをくすぐったそうに身をよじり、ギュッと抱きしめている最中トグは

「だーかーらー!」

「キュー!」

「お前らのリーダー! 統括者! 親分!」

「キュー・・・ギャー!」

「だーーーーーもーーーーー!!!」

ファミリア二体と格闘していた。

その時、遠くから一人の少女が走ってくるのが見えた。

「あ、きゃあ! すす、すいませんー! ああっ! ごめんなさいぃ」

と、大声で叫びながら広場を走り回っていた。
余程慌てているようで、通行人にぶつかりながらも、走り回っていた。

「グラとヒースとケリクー! もう怒ってないからでぇてぇきぃてぇーーーー!」

ペットの名前なのだろうか、弱々しい声で遠慮がちに叫ぶ。
もっぱら、後半は涙混じりの鼻声だったが。

イクィの膝に乗ったファミリアと、トグと格闘中のファミリア二体がピクリと反応する。

「おやつ抜いたりしないからぁー! もどってきてよおぉ・・・」

と、力なく叫ぶと彼女は地面に膝をつきガクリと項垂れる。
orz ←の形でぼろぼろと涙をこぼしながら、しゃくりあげていた。

「ご主人様なの?」

イクィは、自分の胸の中に顔を埋めているファミリアに聞いた。

「キューイ!」

ファミリアは元気よく返事をし、よじよじとイクィの肩に乗ろうと移動を始める。

「もう ほら、帰りなさい 心配してるわよ」

そう言うとイクィは、ファミリアを抱えたままorzしている女の子に向かっていった。
もどってきてよぉぉと呟いている彼女の肩をつんつん突き、ファミリアを地面に置いてやる。

「ふぇ・・・? ケリクー・・・・・・?」

涙でぼろぼろの顔は、まるで幻影でも見たかのような何とも言えない表情を浮かべた。

「キュ♪」

ファミリアが、少女の顔をペロペロ舐めると、とたんに少女の顔はくしゃくしゃになり


「ケリ・・・くぅ・・・ うわぁあん! ケリクーさみじがっだよおぉおぉぉお!!」


「キュ、キュー!」

ガバッとファミリアを抱きしめ離さない少女と、苦しくてロープロープしてるファミリア。

やがて、トグと言い争っていたファミリアも、少女の方へ行き、一件落着した。

一件落着したー?  
たぶん、したのかもしれない。

「えと、お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでしひゃ!」

盛大に噛んだ少女を微笑みながら見つめる二人。
し、視線が熱いっ とか呟いて真っ赤になる少女。

「私は、砂漠都市リンケンを治めるファミリア軍の長 Squallです」

二人は驚きつつも、まずは自分の身元を明らかにする。


「私はイクィ・エヴァです よろしく」
「俺はTogusa 好きに呼んでくれ」


スコールは、貴重な旅人さんですね!歓迎しまひゃ!と、また盛大に噛んだが、二人はもう気にしないことにした。

スコールは可愛らしい女の子だ。
髪の色は青 長髪で、腰の部分まである。
見るからに少女と言える体型だ。 服装はビーストテイマー上位正装。
いわゆる黒子、と呼ばれる装備を身に纏っている。
腰にねこじゃらしのような物が見えた気もするが、多分それは気のせいだろう。

「それで、何でこの街へ? ここは観光目的の場所ではないので、
砂漠を抜ける休憩所みたいな感じなんですけど、もしかしてお二人もそうなんですか?
あ、恋人どうしとか! いいですよね! 
私もこんな所でリーダーしてなかったら出会いとかも結構あると想うんです!
王都ブルンネンシュティグに行くのが私の夢なんです!
あ、なんか私だけ喋っちゃってる・・・・・・ で、旅の目的をお聞かせ下さい」

スコにつれられ、街のファミリア保安所と言うところに連れられ、まず第一声がそれだった。
余程外の世界に興味があるのか、トグの話を熱心に聞いていた。

「中間世界ですか・・・ なんだか想像できないですね?」
スコは若干混乱気味のようで、腕を組んで考え込んでいる。

「ここに、その水の神、土と闇のバンクルがあると聞いてやってきたんだ」

「う~ん・・・残念ながら、私はここで生まれ育ってますけど、そんな話は聞いたことありませんね・・・
この街は小さいですし、昔話のような物も少ないですし」
イクィは、その言葉を聞いて すぐに見せてください とスコに頼んだ。

「じゃあ案内します 地下にあるので足下にお気を付けくだs・・・・・・ きゃあぁぁ~~!!」

言い終わるや否や、地下へと続く階段で先頭を行っていたスコは、盛大にこけた。
なんとかイクィが助け出したが、相当テンパってるようで

「こぉなるので! 絶対足踏み外したら危険なんでひゅ! 安全に! 安全にー!!」

と、叫んでいた。


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